問題
次の文章は,原子燃料に関する記述である。
核分裂は様々な原子核で起こるが,ウラン235などのように核分裂を起こし,連鎖反応を持続できる物質を\fbox{(ア)}といい,ウラン238のように中性子を吸収して\fbox{(ア)}になる物質を\fbox{(イ)}という。天然ウラン中に含まれるウラン235は約\fbox{(ウ)}%で,残りは核分裂を起こしにくいウラン238である。ここで,ウラン235の濃度が天然ウランの濃度を超えるものは,濃縮ウランと呼ばれており,濃縮度3%から5%程度の\fbox{(エ)}は原子炉の核燃料として使用される。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
解説
(ア)
核分裂性物質とは,原子核に熱中性子を吸収して核分裂する物質のことです。熱中性子とは,中性子が周囲の原子(分子)の熱運動と熱平衡状態に達した中性子のことです。熱運動とは分子が不規則に動いている状態のことであり,熱平衡状態に達したというのは,中性子も周りの分子と同じように不規則に動いている状態になったということです。ウラン235はこの熱中性子により核分裂しますので,核分裂性物質です。
放射性物質とは,放射線(α線,β線,γ線,X線等)を出す力をもった物質のことです。ウラン235はα線を放出しますので、放射性物質でもあります。
ここでは核分裂についての記載であるため,「核分裂性物質」が適切な選択肢です。
(イ)
ウラン238は熱中性子では核分裂をしませんが,熱中性子よりも移動速度が速い(運動エネルギーが高い)高速中性子を吸収すると核分裂をします。このため,ウラン238は核分裂性物質ではありませんが,核分裂が可能な物質です。
ウラン238が高速中性子を吸収して核分裂すると,プルトニウム239となります。(より正確には、ウラン238が中性子を吸収してウラン239になったのち、β-崩壊(電子と反ニュートリノを放出)によりネプツニウム239になり、さらにもう1回β-崩壊を起こしてプルトニウム239となります。)プルトニウム239は核分裂性物質です。
このように核分裂性物質ではない物質が中性子を吸収して,核分裂性物質に変換する物質のことを親物質と呼びます。
(ウ)
自然界より採掘されたウラン(天然ウラン)には,ウラン235は0.7%程度しか含まれていません。
(エ)
濃縮ウランとは天然ウランよりもウラン235の濃度を高めたものであり,濃縮度が20%以下のものを低濃縮ウラン,20%をこえるものを高濃縮ウランといいます。天然ウランよりも濃度が下回るものは劣化ウラン(減損ウラン)といいます。
原子炉の核燃料として使われるウランは,低濃縮ウランです。
以上より,正しい選択肢の組み合わせは(2)となります。
解答
(2)