問題
次の文章は,避雷器に関する記述である。
避雷器は,雷又は回路の開閉などに起因する過電圧の\fbox{(ア)}がある値を超えた場合,放電により過電圧を抑制して,電気施設の絶縁を保護する装置である。特性要素としては\fbox{(イ)}が広く用いられ,その\fbox{(ウ)}の抵抗特性により,過電圧に伴う電流のみを大地に放電させ,避雷後は\fbox{(エ)}を遮断することができる。発電所用避雷器では,\fbox{(イ)}の優れた電圧ー電流特性を利用し,放電耐量が大きく,放電遅れのない\fbox{(オ)}避雷器が主に使用されている。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
解説
避雷器とは,雷や開閉サージなどの過電圧が回路に発生した場合に,機器の故障を防ぐためにある大きさ以上の電圧にならないように制限するための装置です。ある大きさ以上の電圧になったときに,避雷器を通して電流を大地に放電することで,電圧を制限します。この避雷器に関しての問題です。
(ア)
問題の選択肢には,「波頭長(はとうちょう)」,「波高値(はこうち)」という用語がありますが,これらは過電圧を表現するための用語です。下図は避雷器を試験するために用いられる,雷インパルスの波形をイメージしたものですが,最初に急峻に電圧が上昇した後,時間をかけて電圧が小さくなるような波形になっています。(実際はもっと電圧の立ち上がりが急峻ですが,この図では見やすくするためにややなだらかに上昇する波形にしています。)
図にも示しているとおり,最初の電圧のピークに相当する大きさを波高値,波高値に至るまでの時間に相当する時間を波頭長と言います。(波高値,波頭長の具体的な定義はJECなどの規格に定められています。)
この問題では,避雷器がある電圧の大きさを超えたときに放電を開始することの説明ですので,波高値が適切な回答です。
(イ)
選択肢の「SF6」はガス絶縁遮断器などに絶縁の為に用いられている気体です。「ZnO」は酸化亜鉛のことで,常温常圧では固体で存在する物質であり,避雷器の素子として用いられています。酸化亜鉛を用いた素子は,通常の電圧では高い抵抗値を示しますが,過電圧が加わると抵抗値が小さくなるという特性があるため,避雷器の用途に適しています。
(ウ)
酸化亜鉛は,先ほど述べたとおり通常の電圧では高抵抗,過電圧が加わると瞬時に低抵抗となる,非線形の特性を持っています。
(エ)
選択肢の「続流」とは,雷による放電現象が終了したのちも,系統からの電流により放電が継続する現象のことです。「制限電圧」は避雷器が動作して電流を大地にバイパスしているときに避雷器に生じる電圧のことで,避雷器を設置することで過電圧は制限電圧以下に抑えることが可能となります。
問題文は電流を大地に放電した後のことの説明ですので,「続流」が適切な回答です。
(オ)
直列ギャップ付きの避雷器とは,避雷器を直接送電線に接続せず,ギャップ(隙間)を設けて避雷器を直接送電線に接続しないようにしたものです。避雷器の素子の非直線特性が良くない頃は,過電圧に至る前に放電を開始してしまうことが問題となり,直列ギャップを設けて放電開始電圧を調整することが行われてきました。ただ,直列ギャップは気中絶縁のため,放電を開始したあとの続流が長くなる問題があります。酸化亜鉛素子を用いた避雷器は非直線特性が優れているため,ギャップが不要であり,続流の問題もありません。
※アレスタとは避雷器のことです
解答
(2)