第3種 機械 R2年度

電験三種 令和2年度 機械 問13『熱伝導の用語に関する問題』

問題

熱の伝導は電気の伝導によく似ている。下記は,電気系の量と熱系の量の対応表である。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

 

解説

熱の伝導は問題文に記載されているとおり,電気の伝導とよく似た関係式で表すことができます。まずは熱系の用語を整理します。

熱量
熱はエネルギーの一種であり,熱がもつエネルギーのことを熱量と言います。熱量を表す単位として,以前は1gの水の温度を1℃上昇させるために必要な熱量を1calとする,カロリーが用いられていましたが,現在はジュール[J]が用いられています。1calは4.186Jです。

 

熱流
下図の物体の両端の2平面の温度差がT[K]のとき,高い温度の面から低い温度の面に向かって熱量が流れます。

この熱量の流れのことを熱流といい,時間あたりの熱量の移動量で表されます。熱量Q[J]がt秒間移動したときの熱流Iは,

I = \dfrac{Q}{t} [J/s]又は[W]

で表されます。

 

熱抵抗
熱量が流れやすいか流れにくいかというのは,熱が流れる物体そのものの熱の伝えやすさ(物体の性質)や,物体の大きさ(物体の長さ,断面積)が影響します。物体の性質,大きさを含めて,物体そのものが熱をどの程度伝えやすいかは,熱伝導率で表されます。

先ほどの図と同様に,断面積がS [m2],長さがL [m]の大きさの物体の,熱の伝えやすさ,伝えにくさがどうなるかを考えます。

同じ長さで断面積が異なる物質に流れる熱量を考えた場合,断面積が大きい方が熱が伝わりやすいので,熱流が大きくなります。

断面積が同じで長さが異なる物質の場合,物質の両端間の温度差は同じであるため,長い物質の方が熱が伝わる時間が多く必要になるため,時間あたりの熱量である熱流は,小さくなります。

物質の熱伝導率を k とし,物体の両端の2平面の温度差がT[K]であるとき,熱流はその温度差に比例することも考慮して上記をまとめると,この物体に流れる熱流は以下のとおりとなります。

I = k \dfrac{S}{L} T

k \dfrac{S}{L} は物体の熱の伝わりやすさを表していますが,この逆数は熱の伝わりにくさを表す指標となり,これを熱抵抗と呼んでいます。熱抵抗を R とすると,

R = \dfrac{L}{kS}

となります。熱抵抗を使って熱流と温度差の関係を表すと,

I = \dfrac{T}{R}

となります。熱流の単位が[W],温度の単位が[K]であるため,熱抵抗の単位は上式の関係から[K/W]となります。

熱伝導率は,

k = \dfrac{L}{RS}

と表されるため,その単位は,

\dfrac{[m]}{[K/W][m^2]} = \dfrac{[W][m]}{[K][m^2]} = [W/(K \cdot m)]

となります。

 

熱容量
ある物体を温めるためには,外部から熱を加える必要がありますが,物体の温度上昇の仕方は,物体そのものの熱の伝えやすさ(物体の性質)や,物体の大きさ(物体の長さ,断面積)により異なります。ある物質でできた物体1kgの温度を1K上昇させるために必要な熱量を比熱といい,単位は[J/kg・K]です。

熱容量とは,ある質量の物体の温度を1K上昇させるために必要な熱量のことです。物体の質量をM[kg],比熱をC[J/kg・K]としたとき,熱容量は質量と比熱との積でMC となり,その単位は[kg][J/kg・K]=[J/K]です。

熱容量がMC [J/K]である物質の温度をT[K]上昇させるために必要となる熱量をQ[J]とすると,その熱量は

Q=MCT

となります。

 

まとめ
熱系の用語とそれぞれの関係をまとめると以下のとおりとなります。

熱流Iと熱量Qの関係 I = \dfrac{Q}{t} (t:時間)
熱流Iと温度差Tとの関係 I = \dfrac{T}{R} (R:熱抵抗)
熱抵抗R R = k \dfrac{S}{L}  (k:熱伝導率,L:物体の長さ,S:物体の断面積)
熱量Qと温度差Tとの関係 Q = MCT (MC:熱容量)

 

電気系諸量との比較

これらを電気系における諸量と比較するため,電流をI_e,電荷量をQ_e電圧をE,電気抵抗をR_e,電流の流れる物体の長さ,断面積,導電率をそれぞれ,L_eS_e\rhoとすると,電気系においてはそれぞれ以下の関係があります。

電流I_eと電荷Q_eの関係 I_e = \dfrac{Q_e}{t} (t:時間)
電流I_eと電圧Eとの関係 I_e = \dfrac{E}{R_e} R_e:電気抵抗)
電気抵抗R_e R_e = \rho \dfrac{S_e}{L_e}  (\rho:導電率,Le:物体の長さ,Se:物体の断面積)
電荷量Q_eと電圧Eとの関係 Q_e = C_eE (Ce:静電容量)

 

電気系における上記の関係を熱系における関係と比較してみると,以下のような対応関係があるのが分かります。

温度差:T 電圧:E
熱量:Q 電荷:Qe
熱流:I 電流:Ie
熱抵抗:R 電気抵抗:Re
熱伝導率: k 導電率:\rho
熱容量:MC 静電容量:Ce

 

問題の解答

以上から,問題の解答は以下のとおりとなります。

(ア)
電圧に対応する熱系の諸量は「温度差」になります。

(イ)
電流に対応する熱系の諸量は「熱流」になります。

(ウ)
熱抵抗の単位は,[K/W]です。

(エ)
熱容量の単位は,[J/K]です。

 

解答

(2)

 

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