第3種 法規 R2年度

電験三種 令和2年度 法規 問13『高調波電流に関する問題』

問題

図に示すように,高調波発生機器と高圧進相コンデンサ設備を設置した高圧需要家が配電線インピーダンスZ_Sを介して6.6kV配電系統から受電しているとする。
コンデンサ設備は直列リアクトルSR及びコンデンサSCで構成されているとし,高調波発生機器からは第5次高調波電流I_Sが発生するものとして,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,Z_S,SR,SCの基本波周波数に対するそれぞれのインピーダンス\dot{Z}_{S1}\dot{Z}_{SR1}\dot{Z}_{SC1}の値は次のとおりとする。
\dot{Z}_{S1}=j4.4Ω,\dot{Z}_{SR1}=j33Ω,\dot{Z}_{SC1}=-j545Ω

(a)系統に流出する高調波電流は高調波に対するコンデンサ設備インピーダンスと配電線インピーダンスの値により決まる。
Z_S,SR,SCの第5次高調波に対するそれぞれのインピーダンス\dot{Z}_{S5}\dot{Z}_{SR5}\dot{Z}_{SC5}の値[Ω]の組合せとして,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(b)「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」では需要家から系統に流出する高調波電流の上限値が示されており,6.6kV系統への第5次高調波の流出電流上限値は契約電力1kW当たり3.5mAとなっている。
今,需要家の契約電力が250kWとし,上記ガイドラインに従うものとする。
このとき,高調波発生機器から発生する第5次高調波電流I_Sの上限値(6.6kV配電系統換算値)の値[A]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし,高調波発生機器からの高調波は第5次高調波電流のみとし,その他の高調波及び記載以外のインピーダンスは無視するものとする。
なお,上記ガイドラインの実際の適用に当たっては,需要形態による適用緩和措置,高調波発生機器の種類,稼働率などを考慮する必要があるが,ここではこれらは考慮せず流出電流上限値のみを適用するものとする。

(1)0.6  (2)0.8  (3)1.0  (4)1.2  (5)2.2

 

解説

(a)

一般的に誘導性リアクタンス(コイル)をX_L[Ω],容量性リアクタンス(コンデンサ)をX_C[Ω]としたとき,

X_L = j2 \pi f L
X_C = \dfrac{1}{j2 \pi f C}

L:インダクタンス
C:キャパシタンス
f:周波数

と表されますので,誘導性リアクタンスは周波数に比例,容量性リアクタンスは周波数に反比例します。

したがって,第5次高調波電流が流れているときのリアクタンスをそれぞれX_{5L}X_{5C}とすると,

X_{5L} = 5X_L
X_{5C} = \dfrac{1}{5} X_C

となります。

問題の配電線のインピーダンス,コンデンサ設備のインピーダンスは,抵抗成分がないため,インピーダンス=リアクタンスと考えてよく,第5次高調波が流れた場合のインピーダンスは以下のとおりとなります。

\dot{Z}_{S5} = 5 \dot{Z}_{S} = j 5 \times 4.4 = j22 [Ω]
\dot{Z}_{SR5} = 5 \dot{Z}_{SR} = j 5 \times 33 = j165 [Ω]
\dot{Z}_{SC5} = \dfrac{1}{5} \dot{Z}_{SC} = -j \dfrac{1}{5} \times 545 = -j109 [Ω]

 

(b)

下図のように,高調波発生機器から発生する第5次高調波電流を\dot{I}_S,6.6kV配電系統へ流出する第5次高調波電流を\dot{I}_N,コンデンサ設備へ流出する第5次高調波電流を\dot{I}_Cとします。

これを(a)で求めたインピーダンスの大きさも含めて回路図で表現すると,以下のとおりとなります。

問題で求められているのは,\dot{I}_Nの大きさが流出上限のときの,\dot{I}_Sの大きさです。ここで,\dot{I}_S

\dot{I}_S = \dot{I}_N + \dot{I}_C

となりますので\dot{I}_N\dot{I}_Cをそれぞれ求めていきます。

\dot{I}_Nの大きさは,問題に記載されているとおり,需要家の契約電力の大きさから求めることができますので,

\dot{I}_N = 3.5 \times 250 = 875 [mA]

となります。

\dot{I}_Cの大きさは,コンデンサ設備に生じる電圧とコンデンサ設備のインピーダンスから求めることができます。コンデンサ設備に生じる電圧は,上の回路図から配電系統に生じる電圧と同じですので,その電圧を\dot{V}とすると,

\dot{V} = \dot{I}_N \times j22 = 875 \times j22 = j19,250 [mV]

です。これを使って\dot{I}_Cを求めると,

\dot{I}_C = \dfrac{V}{j(165-109)} = \dfrac{j19,250}{j56} = 343.75 [mA]

となります。したがって,

\dot{I}_S = \dot{I}_N + \dot{I}_C = 875 + 343.75 = 1,218.75 [mA] \fallingdotseq 1.2 [A]

となります。

 

解答

(a)(5)
(b)(4)

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