問題
図のように,直流電源にスイッチS,抵抗5個を接続したブリッジ回路がある。この回路において,スイッチSを開いたとき,Sの両端間の電圧は1Vであった。スイッチSを閉じたときに8Ωの抵抗に流れる電流Iの値[A]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.10 (2)0.75 (3)1.0 (4)1.4 (5)2.0
解説
8Ωの抵抗を回路に接続した状態を考えて,回路に流れる電流を計算して求めることも可能ですが,計算に時間がかかります。(別解に計算方法を記載しています。)
回路の任意の端子に抵抗を接続したとき,その抵抗に流れる電流を求めるための方法としては,テブナンの定理という便利な定理がありますので、この定理を用いて問題を解いていきます。
テブナンの定理を用いるためには、8Ωの抵抗とスイッチが接続された端子を開放しているときの電圧,その端子から回路を見たインピーダンスが必要となります。
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1開放端の電圧
問題文に「スイッチSを開いたとき,Sの両端間の電圧が1Vであった」と書かれています。テブナンの定理を用いる場合に必要な開放端の電圧は,8Ωの抵抗とスイッチが接続された端子間の電圧ですが,スイッチSを開いているときは,8Ωの抵抗には電流が流れていないため,スイッチSの両端間の電圧と,8Ωの抵抗とスイッチが接続された端子間の電圧は等しくなるため,その電圧値は1Vとなります。
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2開放端よりみた回路のインピーダンス
端子から見た回路の内部インピーダンスを求めるとき,電源は短絡して考えるため,以下の回路のようになります。
上図を見やすく書き換えると,
となります。1Ωと4Ωの抵抗が並列接続,2Ωと3Ωの抵抗が並列接続で,これらの並列接続が直列に接続されていますので,この回路の合成抵抗値を求めると以下のとおりとなります。
\dfrac{1 \times 4}{1+4}+\dfrac{2 \times 3}{2+3}=\dfrac{4}{5}+\dfrac{6}{5}=2[Ω]
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3等価回路に抵抗を接続して電流を求める
8Ωの抵抗とスイッチを接続する端子の開放電圧,その端子から見た内部のインピーダンスが分かりましたので,その等価回路を書くと以下の様になります。
この等価回路に8Ωの抵抗とスイッチを接続して,スイッチを閉じたときに流れる電流Iを求めると,
I=\dfrac{1}{2+8}=0.10[A]
となります。
別解
テブナンの定理を用いずに,8Ωの抵抗とスイッチを回路に挿入し,その回路に流れる電流を直接計算で求めることも可能です。
8Ωの抵抗とスイッチを回路に接続し,スイッチを閉じた状態の回路を書くと以下の様になります。
このままでは見づらいので,見やすく書き換えると,
となります。
上図のとおり閉じた回路が3つあり,各回路に流れる電流をi_1,i_2,i_3と仮定して,各回路についてキルヒホッフの法則を用いると,以下のとおり3つの式を得ることができます。
・i_1の回路
2(i_1-i_2)+3(i_1-i_3)=5
整理して
5i_1-2i_2-3i_3=5
・i_2の回路
2(i_2-i_1)+i_2+8(i_2-i_3)=0
整理して
−2i_1+11i_2-8i_3=0
・i_3の回路
3(i_3-i_1)+8(i_3-i_2)+4i_3=0
整理して
−3i_1-8i_2+15i_3=0
得られた式を再度以下にまとめます。
5i_1-2i_2-3i_3=5
−2i_1+11i_2-8i_3=0
−3i_1-8i_2+15i_3=0
この連立方程式を解けば,i_1,i_2,i_3を求めることができます。
あるいは行列の形にして,
\begin{bmatrix} 5 & -2 & -3 \\ -2 & 11 & -8 \\ -3 & -8 & 15 \\ \end{bmatrix} \begin{bmatrix} i_1 \\ i_2 \\ i_3 \\ \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 5 \\ 0 \\ 0 \\ \end{bmatrix}
となりますので,これを変形して
\begin{bmatrix} i_1 \\ i_2 \\ i_3 \\ \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 5 & -2 & -3 \\ -2 & 11 & -8 \\ -3 & -8 & 15 \\ \end{bmatrix} ^{-1} \begin{bmatrix} 5 \\ 0 \\ 0 \\ \end{bmatrix}
となり,これを計算すると答えが求まります。
この計算も大変なため,電験の試験では使用できない関数電卓で計算すると,以下のとおりとなりました。
\begin{bmatrix} i_1 \\ i_2 \\ i_3 \\ \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 2.08 \\ 1.08 \\ 0.98 \\ \end{bmatrix}
8Ωの抵抗にはi_1とi_2が流れており,その電流Iは向きに注意して求めると
I=i_2-i_3=0.1[A]
と求まります。
このようにテブナンの定理を用いなくても,答えは得られますが,短い時間で沢山の問題をこなさなければならない電験の試験でこの方法で計算するのは,時間を要するためお勧めできません。
【おまけ】
電験の試験中には使えませんが,関数電卓は持っていると大変便利です。私は以下の機種の2〜3世代前の機種をいまだに使っていますが、「AC」ボタンと「=」ボダンの印刷が消えてしまい,数字も一部消えかかっています。現行機種は機能もだいぶ上がっているようです。
グラフ機能付きは個人的にも興味ありです。持っていて楽しそう。
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解答
(1)