第3種 電力 R2年度

電験三種 令和2年度 電力 問12『高圧架空送電線路の機材に関する問題』

問題

高圧架空配電線路を構成する機材とその特徴に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)支持物は,遠心成形でコンクリートを締め固めた鉄筋コンクリート柱が一般的に使用されている。
(2)電線に使用される導体は,硬銅線が用いられる場合もあるが,鋼心アルミ線なども使用されている。
(3)柱上変圧器は,単相変圧器2台をV結線とし,200Vの三相電源として用い,同時に変圧器から中性線を取り出した単相3線式による100/200V電源として使用するものもある。
(4)柱上開閉器は,気中形,真空形などがあり,手動操作による手動式と制御器による自動式がある。
(5)高圧カットアウトは,柱上変圧器の一次側に設けられ,形状は箱形の一種類のみである。

 

解説

(1)

記載のとおり正しいです。

遠心形成とは,コンクリート柱の型枠にコンクリートを入れ,その型枠を回転させて製造する方法です。型枠を回すことで,遠心力でコンクリート材料の重い物が外側に集まり,コンクリートに含まれる水分が中心付近に集まるようになります。コンクリートは水分が少ない方が強度が強いため,この製造方法により,強度を増したコンクリート柱を製造することができます。

 

(2)

記載のとおり正しいです。

高圧架空配電線には絶縁電線が使用されますが,その導体としては,硬銅線や硬銅より線を用いたものが多いです。硬銅線とは,引張強さの強い単一断面積の導線で,硬銅より線とは,いくつかの硬銅線をより合わせたもので,可とう性に優れています。

導体には銅の他,アルミを使った製品もあります。

参考ですが,高圧架空配電線には裸電線の使用は禁止されています。裸電線が使えるのは特別高圧だけです。

 

(3)

記載のとおり正しいです。

V結線とは,単相の変圧器2台を使って,下図の様に結線して使用するものです。
上図のとおり,1台目の変圧器の1次側(高圧側)には配電線のAB相の電圧\dot{V}_{AB}を接続し,2台目の変圧器の1次側(高圧側)には配電線のBC相の電圧\dot{V}_{BC}を接続します。このとき,各変圧器の2次側(低圧側)に現れる電圧をそれぞれ,\dot{V}_{ab}\dot{V}_{bc}とすると,\dot{V}_{ab}の位相は,一次側の電圧\dot{V}_{AB}と同位相,\dot{V}_{bc}の位相は一次側の電圧\dot{V}_{BC}と同位相であるため,電圧の位相関係は下図のとおりとなります。

ここで,二つの変圧器の2次側の合成である,端子c−a間の電圧に注目すると,この端子間に現れる電圧は,\dot{V}_{ab}\dot{V}_{bc}とのベクトル和の逆向きになっています。

その電圧を\dot{V}_{ca}とすると,上図のとおり,\dot{V}_{ab}\dot{V}_{bc}\dot{V}_{ca}の位相関係が120°ずつ異なる3相交流電圧になります。

したがって,単相変圧器の低圧側に200Vが現れるように変圧器の変圧比を選定すれば,単相変圧器2台でも200Vの三相交流を得ることができます。

問題文の後半の「同時に変圧器から中性線を取り出した単相3線式による100/200V電源として使用するものもある」については,下図のように,2台ある単相変圧器のうち,1台の変圧器の2次側巻線の真ん中から線を引き出し,その線を中性線として単相の電圧を使えるようにしたものです。

変圧器2次側の電圧を200Vとした場合,真ん中から中性線を引き出しているため,その中性線と端子間の電圧は半分の100Vとなり,100Vと200Vの二種類の単相電源として利用することができます。

 

(4)

記載のとおり正しいです。

柱上開閉器とは電柱の上に取り付けられ,需要家の設備と配電線との接続を開閉できるようにするための装置です。柱上開閉器の種類としては,気中開閉器,ガス開閉器,真空開閉器などがあります。柱上開閉器の開閉機構をひもで引っ張って操作する手動式のものや,開閉機構を機械で操作する自動式のものがあります。

 

(5)

高圧カットアウトとは,高圧の需要設備や配電線の変圧器などの一次側(配電線側)に設けられる開閉器の一種です。ヒューズを内蔵しており,過負荷や短絡保護を行うことができます。

高圧カットアウトの形状は,箱形の他に円筒形のものがあるため,問題文の記載は誤りです。

 

解答

(5)

 

-第3種, 電力, R2年度