第3種 機械 R2年度

電験三種 令和2年度 機械 問2『直流発電機の試験で効率を求める問題』

問題

界磁に永久磁石を用いた小形直流発電機がある。回転軸が回らないよう固定し,電機子に3Vの電圧を加えると,定格電流と同じ1Aの電機子電流が流れた。次に,電機子回路を開放した状態で,回転子を定格回転数で駆動すると,電機子に15Vの電圧が発生した。この小形直流発電機の定格運転時の効率の値[%]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし,ブラシの接触による電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとし,損失は電機子巻線の銅損しか存在しないものとする。

(1)70  (2)75  (3)80  (4)85  (5)90

 

解説

小型直流発電機の定格運転時の効率を求める問題です。一般的に効率は,入力に対してどれくらい出力できるかを割合で表したものです。入力の大きさよりも出力の大きさが小さくなるのは色々な損失があるためですが,この問題では損失は電機子巻線の銅損のみとしています。

したがって,この問題での効率を\etaとすると,

\eta = \dfrac{出力}{入力} \times 100= \dfrac{入力-銅損}{入力} \times 100[%]

と表すことができます。

問題で与えられた条件を使って,入力と銅損のそれぞれの大きさを求めることができれば,この問題を解くことができます。

 

step
1
入力の大きさを求める

永久磁石を用いた小型直流発電機の模式図と電機子回路の等価回路は以下のように書くことができます。

この図の左側は模式図で,永久磁石をNとSで表しています。V_nは定格運転時の発電機の端子電圧,I_nは定格運転時の発電機の定格電流を表しており,R_aは電機子の抵抗,E_nは定格運転時に電機子回路で発生する電圧です。

右側の図は電機子回路の部分を電源と抵抗で表した等価回路です。

発電機では,電機子回路を外部の力で回転させて電気を発生させるため,本当の意味での発電機の入力は外部の力になります。ただ,この問題では銅損以外の全ての損失は考えなくてもよいため,発電機の入力の大きさは,外部の力により発生した電圧と定格時の電流のみを考えれば求めることができます。

発電機の定格時の電流の大きさは,問題文に記載されており,その大きさは1[A]です。

発電機の定格運転時に電機子で発生する電圧の大きさも,問題文から読み取ることができます。それは,「電機子回路を開放した状態で,回転子を定格回転数で駆動すると,電機子に15Vの電圧が発生した」という部分です。

等価回路において,発電機の端子電圧V_nを式で表すと,

V_n = E_n - I_nR_a

となりますが,電機子回路を開放した状態,すなわち発電機の端子を開放した状態では,回路に電流が流れないので, I_n = 0 であるため,

V_n = E_n

となり,発電機の端子で測定出来る電圧がそのまま,電機子回路で発生する電圧となります。

したがって,定格運転時に電機子回路で発生する電圧は15[V]であることが分かります。

以上より,定格運転時の電流と電圧の大きさが分かりましたので,定格運転時の発電機の入力の大きさは,

1 \times 15 = 15 [W]

であることが分かります。

 

step
2
銅損の大きさを求める

銅損の大きさを求めるためには,電機子回路の抵抗の大きさR_aを求める必要があります。その抵抗の大きさは,問題文の「回転軸が回らないよう固定し,電機子に3Vの電圧を加えると,定格電流と同じ1Aの電機子電流が流れた」という記載から求めることができます。

この記載の状態を等価回路で表すと,以下の図のようになります。

回転軸が回らないように固定されているため,電機子回路内の導体が動くことができず,フレミングの右手の法則により発生する電圧Eは0[V]となります。

電機子に3Vの電圧を加えるとありますが,これは発電機の端子に加える電圧のことであり,図では, V = 3 [V]と記載しています。電機子電流も問題文に記載のとおり1[A]を記載しています。(電流の大きさは定格電流と同じということなので,電流の大きさを表す文字はI_nIに添え字のnをつけたままにしています。)

この等価回路から,電機子回路の抵抗の大きさは,以下のとおり求めることができます。

R_a = \dfrac{V}{I_n} = \dfrac{3}{1} = 3  [Ω]

抵抗の大きさが求まりましたので,この抵抗での損失を求めます。抵抗での損失は抵抗に流れる電流値の2乗と抵抗値の積で求めることができますので,

I_n^2 R_a = 1^2 \times 3 = 3 [W]

となります。

 

step
3
効率を求める

ここまでで,発電機の入力の大きさが15[W],抵抗での損失の大きさが3[W]であることが分かりました。これらの値を使って,発電機の効率を求めると,

\eta = \dfrac{出力}{入力} \times 100= \dfrac{入力-銅損}{入力} \times 100

= \dfrac{15-3}{15} \times 100 = \dfrac{12}{15} \times 100 = 80[%]

となります。

 

別解

効率は出力の大きさを使っても求めることができます。出力の大きさは発電機の端子に表れる電圧と電流の大きさから求めることができます。

以下の図は発電機が定格運転時の電圧,電流を表した等価回路です。

この図で,電機子回路で発生する電圧E_nはステップ1の説明のとおり15[V],電機子回路の抵抗はステップ2で求めた3[Ω]をそれぞれ記載しています。定格時の電流は問題文より1[A]であり,このときの発電機の端子間の電圧をV_nとしています。

ここで,V_n

V_n = E_n - I_n R_a

と表すことができますので,この値を求めると,

V_n = E_n - I_n R_a = 15 - 1 \times 3 = 12 [V]

となります。

この値を使って発電機の出力を求めると,

V_n I_n = 12 \times 1 = 12 [W]

と求まります。したがって,発電機の効率は,

\eta = \dfrac{出力}{入力} \times 100= \dfrac{12}{15} \times 100 = 80 [%]

となります。

 

解答

(3)

 

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