第3種 機械 R2年度

電験三種 令和2年度 機械 問6『交流整流子モータに関する問題』

問題

交流整流子モータは,直流直巻電動機に類似した構造となっている。直流直巻電動機では,加える直流電圧の極性を逆にしても,磁束と電機子電流の向きが共に \fbox{(ア)} ので,トルクの向きは変わらない。交流整流子モータは,この原理に基づき回転力を得ている。
交流整流子モータは,一般に始動トルクが \fbox{(イ)} ,回転速度が \fbox{(ウ)} なので,電気ドリル,電気掃除機,小型ミキサなどのモータとして用いられている。なお,小容量のものでは,交流と直流の両方に使用できるものもあり, \fbox{(エ)} と呼ばれる。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組み合わせとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

 

解説

交流整流子モーターとは,直流直巻電動機に似た構造の電動機で,内部に整流子があり,交流を入力とする電動機のことです。回路構成が直流直巻電動機と同様で,交流でも直流でも運転が可能であることから,ユニバーサルモーターとも呼ばれています。

直流直巻電動機に交流を加えても電動機が回転できる理由は,この問題文にも記載されいるとおり,電動機の磁極に発生する磁界の向きが電流の向きに応じて変化するというところにありますが,より具体的には以下の解説で説明します。

 

(ア)

直流により磁極に発生する磁束は,流れる電流の向きによってその方向が変わります。電機子回路に流れる電流も回路に加える直流電圧の極性によりその方向が変わります。したがって,直流直巻電動機に加える直流電圧の極性を逆にすると,磁極で発生する磁束,電機子に流れる電流の両方とも逆になります。

交流整流子モータはこの原理に基づいて回転しますが,回路に流れる電流の方向によって,どのように磁束が発生し,電機子に加わる力がどのようになるかを図で説明します。

以下の図は,交流電源から流れる電流の極性ごとに,磁極で発生する磁束の向き,電機子に流れる電流の向き,および電機子電流と磁束により電機子回路に生じる力の向きを表したものです。

 


図1

図1は,交流電源から流れる電流の極性が正のときの様子を表しています。磁極に生じる磁束は,図の磁極の左側から右側の向きに生じる(左側がN極,右側がS極)としています。電機子回路には青色の整流子から赤色の整流子の方向に電流が流れますが,フレミングの左手の法則により回路には図に示した方向の力が生じます。

 


図2

図2は,交流電源から流れる電流の極性が負になったときの様子を表しています。電機子回路の位置は図1のときからは少し回転しています。電源から流れる電流の向きが図1のときと逆方向となるため,磁極で発生する磁束の向きも反対になっています。電機子回路に流れる電流の向きも図1とは反対方向です。このときの磁束の向き,電流の向きにフレミングの左手の法則を適用して,電機子回路に生じる力の向きを考えると,図に示した向きとなり,力の向きは図1と同じ方向になります。このため,電動機はそのまま回転を続けることができます。

 


図3

図3はおまけのようなものですが,ブラシと接触するそれぞれの整流子が入れ替わるタイミングのときの図です。青色と赤色で示した整流子がブラシにより短絡されていますが,電機子回路側の抵抗が整流子の抵抗よりも大きいため,電機子回路にはほとんど電流が流れず,そのため電機子回路には力がほとんど生じていません。この瞬間は電動機は惰性で回転し,整流子が短絡されない状態になれば再び電機子回路に電流が流れ,力を生じるようになります。

以上が直流直巻電動機に交流を加えても電動機が回転できる理由です。回路構成だけ考えると,直流直巻電動機と何も変わらないですが,交流整流子モーターと直流直巻電動機との構成上の違いは,ネットで検索すると,磁極の鉄心の構造にあるようです。電磁誘導により生じる渦電流により,鉄心で発生する熱が問題となるため,鉄心の構造を誘導電動機と同様な構造にしているとのことです。

 

(イ)(ウ)

交流整流子モーターは電源に交流を用いているものの,直流電動機と同様の原理で動作しています。このため,電動機の特性としては直流直巻電動機と同様の特性になります。

直流直巻電動機は,始動トルクが大きく,回転数が高いという特性があるため,交流整流子モーターでも同様となります。

 

(エ)

最初にも説明したとおり,交流整流子モーターは回路構成が直流直巻電動機と同様であり,交流でも直流でも運転が可能であることから,ユニバーサルモーターとも呼ばれています。

 

解答

(5)
 

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