問題
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく分散型電源の高圧連系時の系統連系用保護装置に関する記述である。
高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合は,次により,異常時に分散型電源を自動的に解列するための装置を施設すること。
a)次に掲げる異常を保護リレー等により検出し,分散型電源を自動的に解列すること。
① 分散型電源の異常又は故障
② 連系している電力系統の\fbox{(ア)}
③ 分散型電源の単独運転
b)\fbox{(イ)}が運用する電力系統において再閉路が行われる場合は,当該再閉路時に,分散型電源が当該電力系統から解列されていること。
c)「逆変換装置を用いて連系する場合」において,「逆潮流有りの場合」の保護リレー等は,次によること。
表に規定する保護リレー等を受電点その他故障の検出が可能な場所に設置すること。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
解説
分散型電源を高圧に連系する場合の系統連系用保護装置に関しては,「電気設備技術基準の解釈」第229条に定められています。以下はその一部を抜粋したものです。
『第229条 高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合は、次の各号により、異常時に分散型電源を自動的に解列するための装置を施設すること。
一 次に掲げる異常を保護リレー等により検出し、分散型電源を自動的に解列すること。
イ 分散型電源の異常又は故障
ロ 連系している電力系統の短絡事故又は地絡事故
ハ 分散型電源の単独運転
二 一般送配電事業者又は配電事業者が運用する電力系統において再閉路が行われる場合は、当該再閉路時に、 分散型電源が当該電力系統から解列されていること。
三 保護リレー等は、次によること。
イ 229-1表に規定する保護リレー等を受電点その他故障の検出が可能な場所に設置すること。
』
上記条文を見れば,解答の選択肢(ア)と(イ)については,(ア)「短絡事故又は地絡事故」,(イ)『一般送配電事業者』となります。
補足
(イ)の選択肢では,「一般送配電事業者」が解答ですが,条文をみると,「一般送配電事業者又は配電事業者」となっています。これは解説で記載した条文が令和4年11月30日付けで改正されたものであり,令和2年2月25日付け時点の条文では,「一般送配電事業者」のみの記載になっているためです。
「電気設備技術基準の解釈」の改正は度々行われているため,受験時点の法令と古い年度の電験の問題では,このような違いが生じることがあります。
(ウ)は,問題に記載されている「逆変換装置を用いて連系する場合」で「逆潮流有りの場合」の箇所を上記の表から読み取ると,「地絡過電圧リレー」となります。(といいつつも,表に記載されているどのような条件でも,系統側地絡事故の保護リレーは,「地絡過電圧リレー」しかありませんが。。。)
条文を覚えていない場合の解答方法
条文覚えていれば,答えは簡単に分かりますが,条文を覚えていない場合がほとんどだと思いますので,その場合は以下のように考えると解答できます。
(ア)は連系している電力系統のどんな異常を保護リレーで検出すればよいかという問題です。問題の選択肢は,「短絡事故又は地絡事故」と「高低圧混触事故」です。
「高低圧混触事故」が生じる事故も当然検出すべき事故ではありますが,この選択肢を選ぶと,高低圧の混触(高圧と低圧の回路が接触すること)以外の事故は検出しなくてもよいという規定になってしまうため,この選択肢はふさわしくないと判断できます。
(イ)は電力系統を誰が運用しているかという問題です。選択肢は,「一般送配電事業者」と「発電事業者」です。一般送配電事業者,発電事業者の定義は,電気事業法の第2条に記載されていますが,その内容を詳しく知らなくても,この問題の電力系統は送電線のことであることを考えると,「発電事業者」よりも「一般送配電事業者」の方がふさわしいと想像できます。
(ウ)は系統で地絡事故が発生した場合に,どのような保護リレーで検出すればよいかという問題です。選択肢は「欠相」と「地絡過電圧」ですが,これは地絡という言葉が含まれている「地絡過電圧」の方だとわかります。なお,欠相とは,3相ある相のうち複数あるいは単独の相が断線などで電気が送れない状態になることです。
解答
(5)