問題
次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」に基づく使用電圧が 6600Vの交流電路の絶縁性能に関する記述である。
a)電路は,大地から絶縁しなければならない。ただし,構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合,又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合は,この限りでない。
電路と大地との間の絶縁性能は,事故時に想定される異常電圧を考慮し,\fbox{(ア)}による危険のおそれがないものでなければならない。
b)電路は,絶縁できないことがやむを得ない部分及び機械器具等の電路を除き, 次の①及び②のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
① \fbox{(イ)}Vの交流試験電圧を電路と大地(多心ケーブルにあっては,心線相互間及び心線と大地との間)との間に連続して10分間加えたとき,これに耐える性能を有すること。
② 電線にケーブルを使用する電路においては,\fbox{(イ)}V の交流試験電圧の\fbox{(ウ)}倍の直流電圧を電路と大地(多心ケーブルにあっては,心線相互間及び心線と大地との間)との間に連続して10分間加えたとき,これに耐える性能を有すること。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
解説
絶縁とは,電線や電気機器などの電気が通っている部分を,不導体,絶縁体により電気が伝わることを遮断することです。絶縁性能とは,絶縁の能力,程度のことを言っています。
絶縁の主な目的は,感電や事故の防止ですので,絶縁性能が悪いと感電や事故の発生につながります。そういった感電や事故を防止するため,「電気設備技術基準」および「電気設備技術基準の解釈」において,絶縁性能について定められています。
絶縁性能について,「電気設備技術基準」では
・電路は大地から絶縁しなければならない
・絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない
などというような,絶縁性能としての基本的なことが記載されています。
その基本的なことを守るために,具体的にどうすればよいのかについては,「電気設備技術基準の解釈」に記載されています。
「電気設備技術基準」では,絶縁をすべきものの対象として,「電路は」という書き出しで記載されています。「電路」というのは,同じく「電気設備技術基準」第一条の定義によると,
『「電路」とは、通常の使用状態で電気が通じているところをいう。』
となっていますので,「電気設備技術基準」で定められている絶縁性能は,電圧の大きさに関わらず,電気が通じる箇所全てについて規定されたものです。
ただ,電圧が大きくなれば,低い電圧に比べて,事故が発生したときの影響が大きくなります。したがって,電圧の大きさ,階級により,求められる絶縁性能の規定も異なったものになっています。
この問題は,「使用電圧が 6600Vの交流電路の絶縁性能について」と記載されていますので,この点を意識して解答する必要があります。
a)
a)に記載されている規定は,「電気設備技術基準」第五条に以下のとおり記載されています。
『第五条 電路は、大地から絶縁しなければならない。ただし、構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合、又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合は、この限りでない。
2 前項の場合にあっては、その絶縁性能は、第二十二条及び第五十八条の規定を除き、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。
3 変成器内の巻線と当該変成器内の他の巻線との間の絶縁性能は、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。』
上記条文の第2項において,「前項の場合にあっては、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。」とありますので,(ア)には「絶縁破壊」という言葉が入ります。
なお,「電気設備技術基準」第五条の条文は,電圧の大きさについては触れられておりませんので,全ての電圧に対して適用されるものです。したがって,問題の6600Vの交流電路についても,当然ながら適用されます。
b)
電路の絶縁性能についての具体的な記載は,「電気設備技術基準の解釈」の第13条から第16条に記載があり。それぞれの条文において,以下のような内容が定められています。
第13条 電路の絶縁
第14条 低圧電路の絶縁性能
第15条 高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能
問題は6600Vの交流電路の絶縁性能についてです。交流の6600Vは高圧に該当しますので,高圧の電路の絶縁性能についての記載がある,第15条の内容に従う必要があります。
問題に記載されている規定は,「電気設備技術基準の解釈」の第15条第一号および第二号において,以下のとおり記載されています。
『一 15-1表に規定する試験電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
二 電線にケーブルを使用する交流の電路においては、15-1表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたとき、これに 耐える性能を有すること。』
この条文に記載されている「15-1表」には,電圧の大きさ,中性点の接地方式の違いなど電路の種類毎に,電路に加える試験電圧の大きさが記載されています。「15-1表」は以下のとおりですが,この表で赤色の線で囲った箇所が,今回の問題の6600Vの交流電路に該当する箇所です。
問題の①の文章は,第15条第一号の条文のとおりですが,6600Vの交流回路に加える試験電圧の大きさは,15-1表で赤色の線で囲った箇所に記載されているとおり,最大使用電圧の1.5倍となっています。
ここで注意しないといけないのは,6600Vという電圧は「最大使用電圧」ではないという点です。「○○Vの回路」というように,一般的に電圧の大きさだけ記載されている場合,その電圧は,使用電圧あるいは公称電圧と言われる電圧の大きさで表されています。問題の「6600Vの交流回路」というのも,「使用電圧が6600Vの交流回路」という意味ですので,使用電圧を最大使用電圧の大きさに変換する必要があります。
使用電圧と最大使用電圧との関係は,「電気設備技術基準の解釈」第1条の1-1表に記載されています。1-1表は以下のとおりです。
6600Vは上記表の「1,000Vを超え500,000V未満」に該当しますので,使用電圧6600Vの最大使用電圧は,表の係数「1.15/1.1」を使って求めると,
6600 \times \dfrac{1.15}{1.1} = 6900
となります。試験電圧は最大使用電圧の1.5倍ですので,最大使用電圧6900Vを1.5倍すると,
6900 \times 1.5 = 10350
となります。したがって,(イ)の選択肢は10350となります。
続いて問題②の文章ですが,こちらは第15条第二号の条文のとおりです。第二号の条文は,試験に使用する電圧を交流ではなく直流とした場合についての規定ですが,条文に「15-1表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を」という記載があることから,(ウ)の選択肢は2が正解となります。
解答
(5)