問題
次の文章は,可変容量ダイオード(バリキャップやバラクタダイオードともいう)に関する記述である。
可変容量ダイオードとは,図に示す原理図のように(ア)電圧V[V]を加えると静電容量が変化するダイオードである。p形半導体とn形半導体を接合すると,p形半導体のキャリヤ(図中の●印)とn形半導体のキャリヤ(図中の◯印)がpn接合面付近で拡散し,互いに結合すると消滅して(イ)と呼ばれるキャリヤがほとんど存在しない領域が生じる。可変容量ダイオードに(ア)電圧を印加し,その大きさを大きくすると,(イ)の領域の幅dが(ウ)なり,静電容量の値は(エ)なる。この特性を利用して可変容量ダイオードは(オ)などに用いられている。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
解説
p形半導体とn形半導体を接合し,p形半導体に正極,n形半導体に負極の電圧を印可すると,電流が流れ,印可する電圧の極性を反対にすると電流は流れなくなります。この電子素子はダイオードと呼ばれ,この特徴を利用して電流の流れを片側のみとする,いわゆる整流のために用いられています。可変容量ダイオードもダイオードの一種ですが,p形半導体に負極,n形半導体に正極を印可し,印可する電圧の大きさにより電極間の静電容量が変化する特徴を利用した電子素子です。バリキャップ,バラクタ,バラクタダイオードとも呼ばれています。今回は可変容量ダイオードの原理に関しての問題です。
(ア)
p形半導体からn形半導体の向きに印加する電圧を順方向電圧と言いますが,可変容量ダイオードでは,n形半導体からp形半導体の向きに電圧を印加して使用するため,逆方向電圧となります。
(イ)
p形半導体のキャリアは正孔,n形半導体のキャリアは電子です。ダイオードに逆方向に電圧が印加されていると,p形半導体には負極が接続されているため,p形半導体内の正孔は負極に引き寄せられ,n形半導体には正極が接続されているため,n形半導体内の電子は正極に引き寄せられます。このため,pn接合部付近は電子,正孔が存在しない層が形成されます。この層のことを空乏層と呼びます。
(ウ)
逆方向の電圧の大きさを大きくすると,電極に引き寄せられる電子,正孔がより多く引き寄せられ,電子,正孔が存在しない領域が広がるため,空乏層の厚さは広くなります。
(エ)
空乏層には電子,正孔が存在しないため,空乏層はあたかも絶縁体のような働きをしています。p形半導体とn形半導体が空乏層を挟み込むような構造になっており,これはコンデンサと同様に考えることができます。空乏層の厚さが広くなると,コンデンサの電極間の距離が広くなることに等しいため,静電容量は小さくなります。
(オ)
無線通信の同調回路は,コイル,コンデンサーの値を変化させて,特定の周波数に同調させるための回路です。可変容量ダイオードは,電圧の大きさにより静電容量を変化させることができるため,無線通信の同調回路に使用されています。
光通信の受光回路に使用される素子はフォトダイオードです。無線通信のFM変調回路では,可変容量ダイオードが使用されているようですが,今回の問題では他の選択肢で正しいものがないため,解答は(1)となります。
解答
(1)