第3種 理論 R2年度

電験三種 令和2年度 理論 問12『光電効果に関する問題』

問題

次のような実験を真空の中で行った。
まず,箔検電器の上部アルミニウ電極に電荷Q[C]を与えたところ,箔が開いた状態になった。次に,箔検電器の上部電極に赤外光,可視光,紫外光の順に光を照射したところ,紫外光を照射したときに箔が閉じた。ただし,赤外光,可視光,紫外光の強度はいずれも上部電極の温度をほとんど上昇させない程度であった。
この実験から分かることとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)電荷Qは正電荷であった可能性も負電荷であった可能性もある。
(2)紫外光が特定の強度よりも弱いとき箔はまったく閉じなくなる。
(3)赤外光を照射したとき上部電極に熱電子が吸収された。
(4)可視光を照射したとき上部電極の電気抵抗が大幅に低下した。
(5)紫外光を照射したとき上部電極から光電子が放出された。

 

解説

光電効果の実験に関しての問題です。光電効果とは,物質に光を投射したときに,その物質から電子が飛び出す現象のことです。
この実験のように,アルミニウム箔に負の電荷を与えると,電荷間でクーロン力が働き,お互いの箔は離れます。箔が接続された上部電極に光を照射すると,光電効果によりその物質から電子が飛び出し,箔に帯電していた負の電荷も減少し,クーロン力が小さくなることで,開いていた箔も閉じる現象が確認できます。
光電効果は,照射する光の波長により,飛び出す電子の量が変わるため,光電効果が小さい光の場合は,箔が閉じない場合もあります。

(1)

与えた電荷が正であった場合,光を照射すると電子が飛び出し,箔の正電荷が大きくなることから,箔はさらに開くことになります。したがって,今回の実験では与えた電荷は負であることが明らかなため,記述は誤りです。

(2)

今回の実験では,紫外線の強度は変化させていないため,記述されていることの確認はできないため,この記述は誤りです。

(3)

熱電子とは,高温の固体から放出される電子のことです。今回の実験では,光の強度はいずれも上部電極の温度をほとんど上昇させない程度であったと記載されているため,熱電子についての記載は誤りです。

(4)

今回の実験では,上部電極の電気抵抗については確認ができないため,記述は誤りです。なお,電気抵抗が大幅に低下するのは,電極の温度が低下した場合が考えられますが,今回の実験では温度変化はないこととなっていますので,そういう面からもこの記載は誤りです。

(5)

最初に説明したとおり,光電効果により電子が放出され,箔が閉じる現象が確認できているため,この記述は正しいです。光電効果により放出される電子は光電子と呼ばれています。

 

解答

(5)

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