第3種 理論 R2年度

電験三種 令和2年度 理論 問3『電磁力に関する問題』

問題

平等な磁束密度 B_0[T]のもとで,一辺の長さが h[m]の正方形ループABCDに直流電流I[A]が流れている。B_0の向きは辺ABと平行である。B_0がループに及ぼす電磁力として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)大きさ2IhB_0[N]の力
(2)大きさ4IhB_0[N]の力
(3)大きさIh^2B_0[N・m]の偶力のモーメント
(4)大きさ2Ih^2B_0[N・m]の偶力のモーメント
(5)力も偶力のモーメントも働かない。

 

解説

B_0がループに及ぼす電磁力を求めるためには,ループの4つの辺のそれぞれにどのような力が作用するかを求め,それらを合成する必要があります。電流が流れている導体が磁界から受ける力は,フレミングの左手の法則を用います。

step
1
磁界が辺AB,辺CDに作用する力

辺ABに流れる電流の向きと磁界の向きは同じであり,辺CDに流れる電流の向きと磁界の向きは反対方向です。フレミングの左手の法則からも明らかなように,電流の向きと磁界の向きが同じ,あるいは真反対の場合には,磁界は電流の流れている導体に対して力を及ぼしません。したがって,辺AB,辺CDが受ける力は0です。

step
2
磁界が辺BC,辺DAに作用する力

辺BC,辺DAに流れる電流の向きと磁界の向きは直交しているため,辺BC,辺DAは磁界から力を受けます。電流の流れる方向がそれぞれの辺で逆向きであるため,力の向きも逆向きになります。
それぞれの方向は,フレミングの左手の法則により,

  • 辺BCに流れる電流が磁界から受ける力の向き:紙面(画面)に向かってくる方向
  • 辺DAに流れる電流が磁界から受ける力の向き:紙面(画面)から下側の方向

となります。
その力の大きさをF[N]とすると,

F=B_0Ih

となります。

step
3
B_0が正方形ループに及ぼす電磁力

正方形ループが磁界から受ける力は辺BC,DAのみであることが分かりましたので,その力を辺CDの真横から見ると,下図のようになります。

この図を見て分かるように,正方形ループには,大きさが等しく,互いに平行で反対向きの二つの力が,異なる作用点(点Cと点D)に働いています。このような二つの力の組は偶力と呼ばれていますので,正方形ループには偶力が働いています。

図からも想像できるように,偶力は物体に回転を生じさせます。物体を回転させる力の大きさを表す量をモーメントと呼び,その単位はN・mです。

偶力のモーメントは,平行な2つの力がそれぞれ作用する方向に向かった引いた線(作用線)の間の距離と力の大きさの積で表されます。作用線の間の距離はhであるため,正方形ループに作用する偶力のモーメントは,

Fh=B_0Ih・h=B_0Ih^2

となります。

 

解答

(3)

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